迎春記

しがないゲイの日常

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同棲の話。

先日、Twitterでフォロワーさんとやりとりをしていて気が付いたんですが、一部の方には僕が恋人と同棲していると勘違いさせてしまってるみたいでした。ここで改めて訂正しておきますが、僕と恋人さんは同棲していません。お互い一人暮らしです。僕らは一昨年の10月から付き合っているので、今だいたい一年半くらいの関係なんですが、今のところ同棲に関して話題になったことは一度もありません。

...いや、正確には「いつか一緒に住んだら柴犬を飼おう」みたいな話はしたことがあるのですが、そのときの内容としては"赤毛が良いか、黒毛が良いか"などといった、ほとんど柴犬の話に終始していましたから(ちなみに僕は赤毛が良くて、彼は黒毛が良いと意見は分かれました)、その"いつか"という部分については、来年や再来年と言ったものではなくて、もっと長期的な意味合いの会話であったと思います(あるいはただの枕詞か)。

では、同棲に興味が無いのかと言うと、少なくとも僕はそういうわけではありません。朝、誰かと一緒に朝食を摂ったり、仕事から帰って来たときに「ただいま」に対して返事があるというのはなんだか憧れますし、そういった気持ち的な面だけでなくて、家事を分担できれば時間的にゆとりが生まれ、水光熱や通信費をまとめれば金銭的にもメリットがありそうです。それに、同じブロガーさんやTwitterのフォロワーの方で同棲をしている人の日常を見ていると、どこか"成熟したような雰囲気"を感じます。それは、"恋人"ではなく、"夫夫(ふうふ)"と呼ぶ方がしっくりくるような、そんな雰囲気。

僕がそう思ってしまうのは両親の影響です。僕は同棲をしている両親の元で育ってきましたから、"家庭を築く"、"生涯を添い遂げる関係を築く"と言った基底には、前提として"一緒に住んでいる"という環境がありました。そして、自分で言うのも恥ずかしいんですが、僕はそんな両親のような関係を恋人さんと築きたいなあと思っています。

 

僕の実家は田舎にあるような小さな商店です。もともとは日用品を雑多的に売るお店だったのですが、僕と兄が大学に入学して家を出ていった頃から、その店舗スペースは、手芸が趣味の母親がハンドメイドで服や小物を作り、DIYが得意な父親がその陳列棚を作る、というようなことを繰り返して、少しずつ雑貨屋の様に変わってきました。これは現在進行形です。

それまではコンクリートざらしの床に、所々さびてしまった金属製の陳列棚に囲まれた寂しい空間であったのに、今では木調の棚に母親の作ったアースカラーの服がかけられ、ユリの花のようなシェードランプが店内を暖色に照らすようになりました。そこは外より少し温度の高い柔らかな空気で満たされていて、明らかに父と母だけの時間が流れています。

仕事を辞めるくらいの遠い将来に、自分がどんな暮らしをしていたいかを想像するとき、僕はどうしてもこの実家の店舗スペースを思い浮かべてしまいます。自分の好きな人と一緒に暖かな家に住む。柴犬も一緒に。僕は、そんな将来に憧れの気持ちを持っているのです。

でももし。今日明日と言うタイミングで、恋人さんから「同棲してみない?」という提案があったら、僕は断ると思います。ほぼ間違いなく。理由として、一番最初に思い浮かぶのが親のことです。昔ブログで書きましたが、僕の両親はたまに僕のマンションにやって来ます。頻度こそ多くないものの、それは突如として。

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この慣習は僕が大学に入って一人暮らしを始めてからずっと続いています。一人暮らしであれば、その辺の調整は簡単でしたが、同棲となるとそうもいかないでしょう。親にはカミングアウトをしないにせよ、何かしら男性と同棲することに関して説明が必要になる。これは、僕にとっては結構なハードルがあることです。でも、正直それは大した理由ではありません。もしそれだけが理由だとしたら、僕は両親にカミングアウトをする良いきっかけだと捉えると思います(多分...)。

じゃ、なぜ同棲したくないのか?

それは、今の僕の生活が「一人だけの時間と空間」というものに支えられていると感じているからです。それはこうやってブログを書く時間かもしれないですし、本を読んでいる時間やごはんを食べている時間かもしれません。もちろん、そんなの同棲していてもできることなのですが、一人きりの空間でそういった時間を過ごすことで、僕の心は整理整頓がされていくように思います。自分の心の中のモヤモヤが言葉になってスッと腹落ちしたり、忘れていた自分の興味がふと思い出されたり。そうした"アハ体験"のような瞬間は、決まって僕が一人きりでいる瞬間に訪れるからです。

恋人と一緒に過ごすことで満たされることはたくさんあるのですが、一人きりで過ごし、自分の心を見つめる時間が、今の僕には必要不可欠だと感じています。幸いなことに、僕と恋人さんは自転車で行けるようなご近所に住んでいます。もし、会いたくなったら、たとえ終電の後だろうと、すたこらさっさと会いに行けるわけです。そうなると、別に今すぐ同棲しなくても...と思ってしまう。仕事で何かと悩みにぶつかってしまう今の僕には、一人きりの時間に訪れる"アハ体験"が必要だから。

まぁあくまでもこれは今の僕の心境です。この先、僕らの関係や僕自身の人間性が今の予想通りに成熟して、「一緒に住もうかな」という気持ちになるかもしれないし、成熟していくにつれて、僕らの中で新しい憧れが見つかり、それは一緒に住まない形かもしれない。それは今はわかりませんが、同棲については焦らず僕らのペースで考えていこうと思っています。