迎春記

しがないゲイの日常

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主導権を奪われる

年始に帰省したとき、約半年ぶりに甥っ子に会った。

前回会ったのは去年のお盆休みのとき。別れ際に「じぃじ」と呼ばれていたので、てっきり自分のことは認識されていないだろうと思っていたが、開口一番「しゅんくん!」と迎えてくれたので驚いた。どういう記憶の整理が行われたのかは疑問だが、嬉しい。前回一緒にクイズ遊びをやった甲斐があった。

クイズ遊びというのは、私がのりもの図鑑を開きながら「パトカーはどれかな?」と問題を出し、甥っ子が「これ!」と指さして回答していく遊び。「フォークリフト」のような難題も正解していく甥っ子の識別力に驚かされたものだった。

(※前回の様子は下記ブログを参照)

甥っ子は今回もクイズ遊びをご所望された。お題は映画『カーズ』。甥っ子が今ハマっているらしい。ただ前回と違ったのは、今回は私が"回答者"にさせられてしまったことである。同シリーズを1作も見たことがない私に対して、甥っ子は「これ何?」と容赦なく出題をしてきた。

しかも、甥っ子は絵本のページを数秒間じっと眺めた後で、何故かメインの登場人物の後ろに映るピンボケしたような車種について集中して出題してくる。どうやら自分の知らない車の名前を知りたいようだった。当然、絵本にもその名称は載っていない。ここから徐々に甥っ子に主導権を奪われ始めた。

まず甥っ子は「これは名前載ってないねぇ」とページをめくろうとする私の手を抑えつけて、こう言い放ったのである。

「調べて」

......こっわ。

2歳にして、どうやらインターネットで検索することで答えが見つかるということを知っているようである。知ってしまったらしい。仕方なく見た目だけの情報を頼りに、スマホで「カーズ 赤い車 黄色い星印」「カーズ 青い車 黄色い模様」などと検索する。すると完全に主導権を奪われてしまった。なんと検索画面を見た甥っ子が、自分でスマホを操作しだしたのである。小さな人差し指を付きだし、上下左右へのスクロールは当たり前、拡大したい画像はクリックし、違ったら画面の右上にある×印を押して前画面に戻る。さすが令和ベイビー......恐ろしいよ。

様になっていて怖い

 

いまや兄夫婦の生活の主導権が甥っ子の手中にあることは、家族で訪れた東山動物園でも明らかだった。いわゆる"イヤイヤ期"を目の当たりにしたのである。「走っちゃだめ」というと「走りたい」と言い、「そっちは階段で危ないから行っちゃだめ」というと「階段行きたい」と言った。

「木に登りたい」と言い出す甥っ子

本当にただ親に反抗したいだけなんだと思った。動物園の滑り台で順番を守らずに遊ぼうとする甥っ子を見て「お友達の邪魔しちゃダメでしょ」と叱る義姉に、「邪魔したい」と言い放つのを見た時は思わず笑ってしまった。君、すごい性格悪いこと言ってるからね。しかし、これが日常である兄夫婦、とりわけ義姉の疲弊具合は目に見えて明らかで、地下鉄で移動するわずか10分弱の時間に爆睡するようになっていた。

正月にこういう甥っ子の様子を目の当たりにしたからか、年明けは街中で小さい子供を連れている夫婦の姿を見る目が少し変わった。ホント偉大だと思う。