迎春記

しがないゲイの日常

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お坊ちゃんの距離感(2023/12/27)

「何それめっちゃお坊ちゃんやん」。少し前に友人のFの家で宅のみをしている時、一緒に飲んでいた友人のKからそう言われた。私の両親は、年末になると正月のお飾りを持ってきてくれて、ついでに部屋の掃除もしてくれる。その話をした時だった。ショックだった。言外に「いい年して全然自立してねぇな」と指摘されたような気がして。

そのくだりを思い出したのは、きょう例によって両親が私の家に来たからである。鏡餅と輪飾りと輪じめを持って。

鏡餅と輪飾り

犬も来た

お昼過ぎに到着した彼らは、私が在宅で仕事する横で、一年間いちども拭いていなかった窓の拭き上げと、同じく一年間放置状態だったバルコニーの掃除をしてくれた。ついでに溜まっていた洗濯も。その姿はまさしく子供部屋を掃除する親そのものだった。改めてKの言葉が反芻して「こりゃ何も言い返せねぇな」と思った。

15時ごろ掃除がひと段落したらしく、母親が「仕事が中断できるなら一緒に御三時にしない?」と言ってきた。仕事はほぼない。「来るときにすごい美味しそうなパン屋があったの」と言って取り出した袋には、都内ならどこでも見かけるチェーン店のロゴが入っていた。「なんだこのお店か......」と思ったが、同時に忘れていた暖かい何か忘い出したような気分にもなった。地元は古いフォントの看板を掲げたようなお店ばかりだったから、東京に来た頃はどのお店を見ても小さな感動があった。いまやチェーンのパン屋くらいでは何とも思わなくなってしまっている。母親を見ていて、感動のハードルはむやみに上げない方が幸福度は高いんだなと改めて思った。

机にはチョコドーナツや、生クリームがサンドされたクロワッサンなど、いかにも子供の時の私が好きそうな甘い菓子パンばかりが並ぶ。いま高脂質なものは控えているんだけどなぁと思いながら、一番許されそうなフレンチトーストをもらった。耳の部分が思ったよりも柔らかくて美味しかった。

帰り際、年末はいつ帰ってくるのか聞かれた。29日から31日にかけては恋人が泊まりに来る。「31日の夕飯までには」と答えると、「大晦日までちゃんと予定があるのね」と少し安心したようだった。相変わらず心配されている。結婚どころか、異性とお付き合いしている気配を全く感じさせない私は。果たして自分の息子は幸せに暮らしているのだろうか。きっと年末の訪問の目的の中には、私の暮らしぶりを確かめるというのもそれなりの割合を占めているのだろう。本当は安心させてあげたい。私は十分幸せに暮らしている。でも安心させてあげられるだけの近況報告を、私はする勇気がない。

お坊ちゃんと言われたときは、自分のこと親離れできてなくてダサいよなぁと思った。親との距離感を見直した方が良いのかなとも。でも今日親と過ごしてみて、それがただ不安を増大させるだけの悪手だと気づいた。せめて安心させるまでは、お坊ちゃんの距離感でいようかと思う。