迎春記

しがないゲイの日常

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迎春読書録(51冊目~54冊目)

【51冊目】吉野源三郎『君たちはどう生きるか』

ジブリ映画の方は何でああなったの?

この本の存在は昔から知っていて(確か「世界一受けたい授業」で教育学者の斎藤孝さんが紹介してた)、それがジブリの新作になるというもんだから良い機会だと読んでみることにしました。原作の方は非常にシンプルなストーリーで、『コペル君』というあだ名の少年が学校での体験を通じて精神的な成長を果たしていくというもの。「説教的な映画になりそうだなぁ」という想定をしていたんですが、全然違いましたねあの映画。ネットで解説を色々読んでみましたがほとんど理解できませんでした。私はこっちの原作の方が好きですね。

(読書期間:2023/9/23~9/25)

【52冊目】さくらももこ『さくら日和』

有名なあのエッセイ「おめでとう新福さん」を収録

最近読んだ朝井リョウさんのエッセイ『そして誰もゆとらなくなった』の中で、本作に収録されている「おめでとう新福さん」というエッセイに言及があったので、気になって読んでみました。

新福さんというのは、さくらさんがエッセイシリーズを出版する際にお世話になったという集英社の方。エッセイシリーズ刊行の打ち上げをしましょうという軽い話が、"新福さんを讃える会"という壮大なパーティの開催に膨らんんだ時のエピソードです。大人の悪ノリLv.100って感じで笑えます。本作の巻末付録には当時のパーティーの台本が付いていて、本作自体も悪ふざけ感があって良いです。

あともう一つ好きだったのが「深まる息子の疑惑」というエッセイ。さくらさんは息子には自分がさくらももこだいうことは隠していたそうなんですが、「ママは本当はさくらももこなんじゃないの?」と疑い始めた息子の疑念を晴らそうとするエピソードです。「私はコジコジやちびまる子ちゃん以外も上手に描ける」と言ってドラえもんのしずかちゃんを書いてみたら「全然似てない」と言われてさらに疑念が深まっていました。

(読書期間:2023/9/26)

【53冊目】夢野久作『ドグラ・マグラ』

精神に異常きたさなくて良かった

名前だけは知っていた日本三大寄書の1つ。家の中にずっと積読状態だった本作をついに読んでみることにしました(上下巻読むのに1か月かかりました...)。

■あらすじ

とある男が目覚めるとそこは見知らぬ部屋の一室。ここがどこなのか、さらには自分が誰なのかさえ、全く思い出せない。戸惑う主人公の元へ「若林」と名乗る医学博士が現れ、ここが精神病院の病室であること、主人公の男はとある事件の重要参考人であることが告げられる。「その事件の犯人のことも知っているはずだから思い出してほしい」と迫る若林。男は若林に見せられた奇怪なモノや文章を通して、自分の正体について一つの仮説を見出すのだが、それが真実なのか自信は持てない。果たして自分は何者なのか。

■感想

小説を読むとき、頭の中で映像化される場合と、主人公の目を通して自分も体験しているようになる気分になる場合とがあると思うんですが、本作は完全に後者です。振り子時計の音だったり、病室の外で聞こえてくる音だったり......一つ一つの描写が本当に細かいのでまるで自分が主人公の「男」になった気分になります。

また物語の途中では、男が精神医学の論文や事件の実況見分調書、とある歴史書といった文章を読むシーンがあるんですが、これらの文書が本当に一字一句挿入されてきて、それさえ主人公と一緒に読む体験をすることになります。これがまた読みづらい。ただ内容は突拍子もない内容の文書なのに、読んでいると段々と真実のように思えてしまうから怖い。洗脳を擬似体験させられた気分です。裏表紙に〈これを読むものは一度は精神に異常をきたすと伝えられる、一大寄書〉と紹介文があるのも納得。

後半につれストーリーが壮大になっていくんですが、発散している感じはなく、理屈は通っていてちゃんとミステリーでした。面白かった......でいいのかな。

(読書期間:2023/9/29~10/29)

【54冊目】朝井リョウ『スター』

自分にとっての"正解"が大事だよね

■あらすじ

主人公は、小さい頃から祖父の影響でたくさんの映画を観てきた「尚吾」と、小さな島で生まれて、どうやったら島の景色をかっこよく撮れるかを考えながらカメラを構え続けてきた「紘」。2人には共同制作した映画が新人映画祭でグランプリを受賞するほどの才能があり、コンビネーションも良かった。しかし、大学卒業後はそれぞれ対照的な道へと進む。尚吾は映画界の名監督の元に弟子入りし、紘はとあるYoutubeチャンネルの映像担当になった。

王道の道に進んだと思われた尚吾だったが中々芽が出せずにいた。そんな時、ふとしたきっかけで紘の作った動画がyoutube上で話題になっていることを知る。既に世の中に作品を出している絋を見て「自分が選んだ道は正しかったのか」と不安を感じる尚吾。しかしそんな紘も、注目こそされたもののチャンネル運営者の"質より量"という方針により、自分の納得のいく動画が作れないことに悩む日々だった。

2人は悩みながらも自分の作りたい映像とは何かを模索し続け、やがて同じ結論に辿り着く。

■感想

映画については全然詳しくないけど、"何かを創る"っていう意味ではこうしてブログを書くことにも共通した部分があって、映画をブログに置き換えてみると、自分にも共感できるポイントが所々にありました。

ブログを書いて公開すれば、閲覧数だったり、コメント数だったり、周りからの反応の大小が数字で分かるようになって、あたかも数字が大きい方が"正解"みたいに感じるけど、そんな数字ばかり追い求めて、書きたいことが書けないブログになったら、それは自分にとっては不正解でしかない。他人の評価は麻薬みたいに快感だけど、自分の大事にしたい部分はそういった外乱から守ってあげたい。

(読書期間:2023/11/9~11/12)