GWに山形に行った。3月末くらいまでは「GWは高いし旅行はやめておこうか」という話だったのに、連休が迫ってくるにつれて膨らむ謎の強迫観念により、けっきょく計画することになった。
目的地は山形県の白川湖で見られる水没林。毎年4月中旬から5月中旬の間だけ、雪解け水が白川湖に流れ込むことでシロヤナギが水没した珍しい景色が見られるらしい。
満員の山形新幹線
7:00。東京駅に着くと、構内はGW後半戦初日に相応しい混雑具合だった。駅弁屋に入ると、中は大量の人によるベルトコンベア状態で、一度通り過ぎた陳列棚にはもう戻れそうにない。悩む余裕も無かったので、一番食べ馴染みのある「東京弁当」を手に取った。値札の千の位に「2」とあり違和感を覚える。レジで発覚することになるのだが、東京弁当の値段が1850円からいつの間にか2000円に値上がりしていた。
8:00、山形新幹線に乗車。予約できたのは12Bと13Cという通路を挟んだ斜めの2席だった。並びで取れなかったのは残念だが、 旅行の計画が遅れたことを考えれば仕方がない。しかし斜めの距離で恋人と2人でやり取りしていたところ、13Bに座っていた女性が「席変わりましょうか?」と声をかけてくれた。優しい世界。ようやく旅行がスタートしたような気分になった。
ただひとつ気がかりだったのが、東京駅の時点では女性の隣の12Aが空席だったことである。あそこに迷惑な客が乗ってきたらどうしよう。心優しいその女性が、席を譲ったばっかりに迷惑客と隣合わせになってしまったとしたら......。東京弁当を食べながらそんなことを思って少しそわそわしていたのだが、大宮駅で同年代くらいの女性が12Aに着座したので安心した。
10:00、白川湖の最寄りの米沢駅に到着。駅舎は"米沢牛"の知名度の高さから想像したサイズ感からは一回り小さな駅だった。
しかし何やら人が多い。ロータリーや歩道にレジャーシートを敷いて座りこむ人までいる。何かパレードでも始まるのかと思っていると、「上杉祭り」という看板が立てかけられているのが見えた。歴史に疎い私でも上杉謙信という名前だけは知っている。最終日の今日は駅前の目抜き通りを上杉軍団が甲冑姿で練り歩くらしい。若干興味が湧くも、一番に気になったのは当日の交通整備情報だった。
運転に不安のある私は、毎回旅行の前にGoogle mapで走行ルートを予習する。今回、白川湖まで向かうルートは、まさにこの駅前の目抜き通りを通るルートだった。この様子だとイレギュラーな通行止めにパニックになる可能性が出てきた。心配になってレンタカー店の方に交通整理の情報を聞いてみると「この先の橋を渡ったら右折してください。そうすればあとはカーナビがリルートしてくれます」とのことだった。期待していたよりも情報量が少ない。でもとりあえず目抜通りは通行止めだということだけはわかった。
白川湖のカヌーツアーに参加
11:30、カーナビの優秀なリルート機能のおかげで無事に白川湖に到着した。
GWだからなのか湖のほとりにはいくつか出店がある。恋人が牛串を買っていたので1口もらった。お祭りの出店の牛串なんてビーフジャーキーくらい固い肉なのだろうなと期待していなかったのだが、噛んだ瞬間にとろけてしまうようなしっかり脂の乗った肉だったので驚いた。よく見たら出店の横に「米沢牛」というのぼりが立っている。これで600円だというからすごい。
12:00からのカヌーツアーに参加。初めてのカヌーに少し緊張する。身体をガチガチにしている私に気がついたのか、若いスタッフの方が「けっこう安定してるので大丈夫ですよ」と声をかけてくれた。ただ、続けて「湖に落ちる人はシーズン中に3人くらいしかいませんので」言うので、彼が安心させようとしているのか、びびらせようとしているのかわからず困惑する。とりあえず湖に落ちても車の鍵だけは無くすまいとポケットの奥に押し込んだ。
ツアー中のガイドはいかにも名物ガイドといった雰囲気のおじいちゃんだった。「昔はカヌー選手の育成なんかやったもんですが、今ではすっかり介護が必要になりました」という自己紹介に、参加者からは周りの反応を探り合うような控えめな笑いが起こった。そんなおじいちゃんガイドから、毎年同じアオサギがやってくるヤナギの木や、水位が下がれば橋がある場所などの説明をしてもらった。 90分ほどのツアーだったが、湖でのんびりとカヌーをするのは非日常感がありリフレッシュできた。満足度は結構高い。
山形で郷土料理を堪能(?)
カヌーツアーを終え、17:00頃にホテルがある山形に到着。ホテルに荷物を置いて、予約していた駅前の山形の郷土料理屋で夕食をとった。さすが米所の山形という感じで日本酒の種類が豊富だった。出羽桜、栄光富士、豊龍、男山、、、と力士みのある名前がメニューの見開きいっぱいに並んでいる。朝から東京弁当と米沢牛の串焼き一切れしか食べてない。お腹は空いている。しかし、この店で山形郷土料理をお腹いっぱい食べました、とはいかなかった。何というか、漬物や味噌焼き(下画像参照)のような酒のアテのような料理が多いのだ。かといって日本酒を嗜むかというと全くそんなことはない。日本酒のメニュー表が番付表に見えていたくらいである。日本酒のことは全然わからない(相撲のことも)。そんな子供のような舌をもつ私にとって、山形の郷土料理は少々大人すぎた。一応、ダシ豆腐や車麩の卵とじなど、山形っぽい料理は食べたが、腹が膨れるということはなく早々にお店を出ることになった。
誤算だったのは今日がGWだということである。お店がどこもいっぱいで入れない。「せっかくだし東京で見かけないようなお店に行こう」と思ったのだが、そういったお店には軒並みドアに「本日は予約で満席です」という張り紙がされていた。一縷の希望をかけて店に入って聞いてみるもやっぱりだめ。7、8件立て続けに断らた我々は、自然ともうホテルに帰ろうかという雰囲気になっていた。駅前の交差点で「最初のお店でもっとゆっくりしていれば良かったなぁ」と後悔しながら信号待ちをしていると、ふと目の前の居酒屋のメニューに目を奪われた。美味しそうな高菜チャーハンが写っている。お腹が鳴った気がした。2人で顔を合わせ、目だけで「もうここで良くね?」「うん」と確認し合い入店。まさか山形県で『目利きの銀次』デビューをするとは思わなかった。
店内に入ると「すぐご案内できますので少々お待ちくださーい!!」という元気いっぱいの声に、心がパッと明るくなった。席に着くやいなや、タブレット端末からホタテのバター焼きとサザエの磯焼き、生搾りレモンサワーと次々に注文カゴに入れていく。ところが肝心の高菜チャーハンが見当たらない。ご飯もののページにはカニチャーハンしかなかった。カニチャーハンも美味しそうだが、こちとら完全に高菜チャーハンの舌になっている。我々は忙しそうにしている店員にをわざわざ呼び止めた。
「あの表の看板にあった高菜チャーハンを頼みたいんですけど」
すると店員は明らかに「えっ?」という顔になった。「し、少々お待ちください」と言って下がっていく。きっと期間限定メニューでまだ店員は把握しきれていないのだろう。そういったメニューはタブレットに反映されていない可能性もありうる。しかし「はて保存がききそうな高菜漬けのチャーハンを期間限定にする意図とは」という違和感に気がついた頃、店員が戻ってきてこう告げた。
「高菜チャーハンはお二階の山内農場さんのメニューです」
......えっ。
先を促すような眼差しを送る店員に小さな声で「すみません」と謝ったあと、我々はカニチャーハンを注文した。美味しかった。
2日目は山寺と山形城へ
2日目は山形駅から電車に乗って山寺へ訪れた。
2日目も天気に恵まれた。1000段の階段上りは暑かったけれど、湿度は高くなくカラリとしていたのでそれほど汗もかかなかった。
その後、山形駅に戻り、新幹線の時間まで山形城で御城印をもらったり駅でお土産を買ったりして過ごした。
以上、1泊2日の山形旅行でした。次回はもう少し日本酒の美味しさがわかった頃に来たいですね。