迎春記

しがないゲイの日常

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従弟の結婚式、私の現在地

2022/11/19(土) 晴れ

昨日の深夜残業したのが祟って、起きたらほぼ12時だった。今日は明日の従弟の結婚式のため地元に帰らないといけない。でも逆に言えば、今日中に地元に帰る以外とくに予定はない訳で、そんな思いからベッドの上でYoutubeを見たりゴロゴロしていたら、ベッドから動き出したのはいよいよ13時を回った頃だった。急いで朝ごはん(というか昼ご飯)作りに取り掛かる。冷蔵庫の中身を整理してから行きたかったから、副次的に栄養バランスが良くなった。焼きサバ、目玉焼き、ほうれん草としめじのソテー、サラダ、キウイ、冷凍ご飯。

その後、平日に溜めてしまった洗濯を片付けたり、部屋の掃除をしたりしていたせいで、結局地元に着いたのは19時過ぎだった。

せっかく私が帰ってきたからということで、夕食は3人で近所の焼肉屋へ。4つ下の従弟が結婚したことで、親戚の中で結婚していないのは自分だけになってしまったから、きっと夕食では結婚の話題で持ちきりになるのだろうと若干身構えていたのだけれど、思ったより親からの圧は強くはなかった。いつもは「お前が結婚したら...」と100%結婚前提で話されるところが、今日は「"万が一"お前が結婚したら...」と一言が追加され、文字通りいけば結婚確率が0.01%に格下げになっている。最初はきっと全く結婚の素振りを見せない息子に、よくやく気づいてくれたのかと期待したけれど、「結婚は人生で一度にして欲しいから、お前が納得いく人をゆっくり探しな」と言われ、親の方も気持ちの落としどころを探ってはいそうだけれど、私がいつか結婚すると思っているところは変わっていないのだと思った。それでも圧が弱まったことで、こちらもいつもより自然体で会話ができて嬉しい。私が大曲の花火大会に行った話も、初めて山でテント泊した話も楽しそうに聞いてくれて、久々の両親との食事はとても楽しかった。

2022/11/20(日) 曇りのち雨

8時半に起床。帰省したときは普段押し入れにしまわれっぱなしの来客用の布団で寝るせいか、いつも鼻水が止まらない。今回もそのせいで中々寝付けず、朝起きても頭がぼんやりとしていた。でも今日は座ってフルコースの料理を食べるだけでいいのだからと、気楽な気持ちで出発する。挙式は12時から。数年前に結婚ラッシュがあって以来、結婚式は久々だった。

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当時も、そして今回も改めて思ったけれど、私は自分の兄貴の結婚式以外で心からの祝意を示せたことが一度もない。自分が行けないステージへと幸せそうに登ってくのを見せられて、自分だけが取り残されていく気分を味わうだけだから。だから結婚式の後はいつも、何とも言えないモヤモヤを抱えてしまう。確実に言えるのはその感情がネガティブなものだということだけ。

大学を卒業してからゲイのコミュニティで生活するようになり、結婚ができないとはいえ、幸せでないと言ったら怒られるくらい恵まれた環境を手に入れて、それでもなお、身近な人の結婚を祝うことが出来ないなんて、何て器の小さな人間なのだろうと自分が嫌になる。今日も従弟夫婦の馴れ初め紹介ムービーや、友人たちから祝福される様子を遠目に見ながら、自分の中にあるモヤモヤの源泉がどこにあるのかを辿ってみたのだけれど、披露宴が終わってもハッキリとしたものは見えてこなかった。...と思っていたら、披露宴終了後にちょっとした"アハ体験"があった。

それは各々が散開してホテルのエントランスへと広がり出したタイミング。従弟夫婦は地元婚ということもあり、なんと私の母と新婦の母(Iさん)は中学校の同級生だったのだが、エントランスでIさんと私の母が立ち話をしていた時のことである。

「今日は来てくれてありがとね」

「Iちゃんが泣いてるところ、バッチリ写真に撮っておいたから」

「もー絶対泣かないって思ってたのに、やっぱりだめねぇ」

そんな他愛もない会話を母親の横で何となく聞いていたのだけど、ふと新婦の母親が言った言葉が私に刺さってきた。

「これで子供3人無事に育て切って、一安心したわ」

そう言った新婦の母親は、ちらっと隣にいる私の顔を見て、慌てたように「あ、男の子はいつでも結婚できるからいいのよ。ほら、うちは3人とも女の子だから」と付け足して少し気まずそうにしていたけれど、まさにこの時私の中でアハ体験が起こっていた。この気まずさに揺り動かされる部分が、結婚する友人たちを見るときに揺り動かされる部分とどこか似ていて、だから気が付いた。

 

自分は親から自分のことを"育て切った"と安心してもらいたいのかもしれない。

 

やっぱり私はどこかで"結婚して一人前"だと思っているのだと思う。だから結婚しなければ親を安心させることができないと思ってしまっている。ゲイデビューを果たしてから、色々な結婚の形があることを見たり、聞いたりしてきたけれど、結婚の価値観に関しては育ての親の影響がかなり根深いことがわかった。だけど少しだけモヤモヤの輪郭が見えてきた気がする。要は結婚以外の方法で親を安心させてあげられたと自分が思うことができれば、きっとモヤモヤが晴れて結婚式で心からの祝意が示せるはず。

もちろん、その方法が何なのか、今はさっぱり分からない。何となくではあるが、結婚のように分かりやすい関所があるのではなく、時間をかけて掘っていくトンネルのようなものである気がしている。それでも今の気分がいつもより軽いのは、その掘り進める方向が見えてきたからかもしれない。

 

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