迎春記

― しがないゲイの日常 ―

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久々の歯の治療

仕事を中抜けして歯医者に行ってきた。先週、歯医者で定期健診と歯のクリーニングをしてもらったとき、右上の奥歯に残っている米粒大のアマルガムの古い充填を、樹脂に詰め替えることを勧められていたのだ。

歯医者は結構好きである。できることなら月1で通い、歯のクリーニングをしてもらいたいと思っているくらいだ。私は口腔内の構造上、下前歯に歯石が付きやすく、丁寧に歯を磨いているつもりでも、1か月もすれば前歯の隙間に歯石がついてきてしまう。そうなると写真を撮るときに口をあけて笑うことができない。だから隙あらば歯医者に行きたい。

だが今回は別だ。クリーニングではなく、歯の"処置"なのだから。久々の処置に、処置とは果たしてどんな具合だったかと少し緊張気味で待っていると、歯科医から「詰め物の深さが浅いので、もしかしたら麻酔無しでいけると思うんですけど、どうします?」と尋ねられた。一瞬だけ「麻酔無しで」と格好つけようとしたが、"もしかしたら"という部分が引っかかり素直にお願いすることにした。久々の麻酔に緊張していたのか、途中「息止めないで鼻からゆっくり息していてください」と注意された。

私のかかりつけの歯医者では、仰向けに寝かされたあと、目元にタオルをかけてくれる。顔を照らすライトを遮ってくれるだけでなく、まるで美容院でシャンプーをしてもらっているようで悪くない。ただ、いつも一つだけ注文をつけたいと思っている。......見たいのだ。自分の歯が処置されているところが。詰め物を外す瞬間も、外した箇所がどんな様子なのかも、光に反応して固まると噂の樹脂の詰め物がどうやって注入されて、どうやって自然な歯の形に整形されるのかも、その一部始終を見てみたい。しかし、このタオルがかけられていなくとも、治療箇所の様子が見えるわけではないし、かと言って治療中に鏡を持たせてもらうわけにもいかない。そうして私の不満はいつも飲み込むほかないのだが、今日の私は冴えていた。一つ思いついたモノがあったのだ。最近ちょくちょく見かけるようになった、あの「VRゴーグル」ならいけるのではないか。照明の位置にカメラを取り付け、処置している様子をVRゴーグル内のスクリーンに映せば、照明がまぶしいという課題も、処置中の様子を見たいという要求もクリアできる。完璧だ。

と、そんなことを考えているうちに処置は終わった。麻酔のおかげで全く痛くなかった。処置後、外したアマルガムは持って帰れるのかと期待したが、残念ながらそのような申し出はなかった。分離された自分の身体の一部だったものは、なぜか手に取ってみたくなる。ちなみに親知らずは、抜歯の過程で砕いたものを除いて、これまで全て持ち帰ってきた。持ち帰ったところで、根元を覗いてみたり、バリのたった部分を指でなぞってみたり、臭いを嗅いでみるくらいしかやることはなかったけれど。

VRゴーグルのアイデア、よくよく考えたら自分の歯に穴をあけられる様子をじっとしたまま見られる自信が私にはなかった。ドリルを歯に近づける度に、ビクビク動かれてしまっては、歯科医も困ってしまうかもしれない。