迎春記

― 手持ち無沙汰なあなたに贈るゲイの小噺 ―

あなたの浮気はどこから?私は...(前編)

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浮気をしてはならない。それは恋人関係における不文律である。

 

でもちょっと待ってほしい。一言に"浮気"といっても、それはどこまでの行為を指すのだろうか。

 

当たり前のように婚姻関係を結んできた男女においては、ある程度お互い納得のいく浮気の定義が醸成されており(ラブホテルに入って、相当時間出てこない場合等)、それに基づいて法的な判断が行われる。

 

しかし、現在同性婚が認められていない我々においてはどうだろう。

 

男女間での浮気の定義を適用することで問題はないように思えるが、法的な婚姻関係が結べない状況においては、そのボーダーラインが人によってかなりボヤっとしていて厳密性がない。

 

かく言う私も、恋人と考えが一致していると自信を持って言えるだろうか。

 

......言えない。

 

だって恋人と「ねぇ。どっから浮気ってことにする?」なんてこと話したことないもの。

 

もしそんなことを聞いたとすれば、それは相手に浮気と非難されないギリギリの範囲で不貞行為を働くことを暗に宣言するようなものである。下手したら浮気をする前に破局だ。

 

しかし、自分の浮気のボーダーラインについて、自分の価値観が世間と大きくズレていないかくらいは裏取りはしておきたい。いつかそういう場面が来たときに「普通それは浮気だろ!」と"普通"を武器にして非難されたくないからだ。

 

「みんなちがって、みんないい」。その金子みすゞさんの言葉に幾度となく救われてきたが、浮気の定義についてはその限りではない。

 

そんなわけで、私は友人との飲み会等で、しばしばどこから浮気なのかについて友人の見解を聞いてみる。しかし、これが本当に人様々なのだ。

 

「え、それもダメなの?重くない?」と言った定義から、「お前それもOKなのかよ。ゆっる笑」みたいな定義もある。

 

......はぁ。これは良くない。本当に良くない。

 

だってそうだろう。2人の関係を揺るがす重要な案件でありながら、その定義がバラバラだなんて、そんなの絶対に良くない。トラブルの温床じゃないか。

 

数学のテストだって、まず確認するのは変数の定義。もちろん慣例めいたものはある(xだったら「変数」、cだったらconstantの頭文字だから「定数」、rはradiusの頭文字だから「半径」、などなど)。しかし、必ずしもその通りではないから定義の確認は必ず必要なのだ。例えば、PなんかはPermitationを意味する「順列」として登場することもあれば、グラフ上を動きたがる「点P」として登場することもある。

 

というわけで、今回はゲイにおける浮気と非浮気の定義統一化に向けて、このブログを読んでくださっている皆さんにも是非ご意見をいただきたい。

 

■ 

 

とは言っても、なんの指針も無く見解を聞いては、せっかくのご意見も整理が難しい。

 

ということで、今回は「とあるゲイ男性が、出会いを目的としたツール(、あるいは場)を通じて恋人以外の男性と知り合い、そして最終的に性行為に至る」という典型的な浮気のモデルケースについて考えたい。このケースを追いながら、具体的にどの段階で浮気と見なすのかを整理するのだ。

 

それでは、とあるゲイ男性が性欲に負けて闇落ちしていく様子を追ってみよう。目次は以下の通りだ。

 

 

 

Level.0:非接触(No Contact)

まずは非接触の段階から。

 

接触もしてないのに、浮気に該当する行為はないのではと思うかもしれないが、過去の事例を聞いていくと、"兆候"だけなら、この非接触の段階から既に始まっていたということは良くある。

 

例えば、平日にLINEの返信が遅くなった、土日に予定が合わなくなったなど。また、SNSでも繋がっているカップルにとっては、LINEの返信はないのにSNSは更新しているなんかもそうだろう。

 

これまで滑らかだった恋人とのキャッチボールにぎこちなさが生じ始めるのは、この非接触の段階からなのだ。千里の道も一歩から。

 

 

しかし、だからといってただの兆候を浮気だとしてしまうのはさすがに厳しい。

 

かつて私は「既読無視 is 死刑」みたいな青年とお付き合いしたことがあるのだが、そのときは2週間ともたなかった。この間に受けた死刑宣告は数知れない(そのお付き合いについては拙著『2週間の恋』を参照されたい。無料で読めます)。それ以来、私はメッセージの通知をポップアップ表示で見るようにして、緊急を要さないメッセージは開かないことにしている。所謂「未読無視」(こっちのがヤダって人もいる。もう勘弁してくれ)。

 

 

恋人という、互いにパートナーと認め合った関係であれば、この小さな摩擦に憤慨するのも理解の余地があるが、昨今のインターネット上においては、例え会ったことのない相手であってもこの摩擦に憤る人がいる。

 

「ログインはしてるのに、どうしてメッセージ返してくれないんですか?」

「無理ならブロックして下さい。無視するのは止めてください」

 

アプリでメッセージを返さないまま最終ログイン1分前とかになっていると、そんなメッセージを送ってくる方々だ。

 

ちょっと待ってくれ。これはもう拒否権無しで野球へお誘いしてくる某N氏とやってることが同じではないか。

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N氏

 

野球だけじゃない。言葉のキャッチボールだって、互いの合意の上で開始したいものである。

 

しかし、こうした無反応に耐えられない方、こちらからボールを投げているんだから投げ返すのが礼儀だと思っている方の実に多いこと。こういう時、どうしたらいいのでしょうか?クラピカさん。 

 

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なるほど。

 

と、現役ハンターのクラピカさんも仰っているわけですから、そうした方々には「沈黙」だって場合によっては返球の1つだということを頭に入れていただき、来年のハンター試験ではぜひ頑張っていただきたい。

 

 

話が逸れた。

 

要は、Lv.0といっても、浮気の兆候がある点で、蔑ろにはできないということだ。ここで咎められたら、やっぱり私はきついけど。

 

では、少しずつ接触の度合いを上げていこう。

 

Level.1:潜在的接触(Potential Contact)

潜在的な接触。それはつまり、現時点で特定の誰かと明確な接触をしている訳ではないが、放っておくと接触に発展する可能性がある行為である。具体例を挙げれば、出会い系アプリのダウンロード等。

 

恋人ができたら出会い系アプリは消す、という方がそれなりの規模で存在しているから、これ以降は浮気行為だと考える人もいるだろう。互いの約束を反故にして、内緒でダウンロードしている場合なんて、不誠実極まりない。

 

 

ちなみにこの潜在的接触への制限は、浮気防止の観点では非常に有効である。ゲイにおいては特に。

 

というのも、我々ゲイには、日常生活における偶発的な出会いなどないからだ。

 

本屋にて同じ本に手を伸ばして思わず手が触れ合いドキッとする。

 

街角にて「遅刻、遅刻〜!!」(ドンっ!!)「ってーな!どこ見て歩いてんだy...(やだめっちゃタイプ)...す、すみませんポッ、お詫びしたいので連絡先を...等々。

 

セクシャリティが可視化されてない以上、我々はそうした恋愛フラグを回収することはできない。ゲイの出会いは出会いを目的に開発されたツール等の"セクシャリティの可視化手段"に大きく依存しているのだ。良くも悪くも。

 

そんな出会いを目的としたツールは、その目的が成し遂げられた時点で手放し、不要なトラブルを回避する。これは、至極真っ当な意見である。

 

 

しかしながら、私は恋人ができた後も、出会い系アプリは消していない。

 

スマホで一緒にYoutubeを見ていたら、画面上に「ブリーディング(*)されました」という通知がスワイプインし、それを無言でスワイプアウトさせるということが何度かあったから、相手もそれは認識はしている。逆に相手もまた、アプリを消していないことを私は知っている。普通に「この前アプリでしゅんの友達見かけたで」といった情報をホウレンソウしてくる。

 

どうやら私と私の恋人は、この潜在的接触に対して、特に後ろめたさを感じていないようである。「出会いを目的としたアプリではあるが、出会い目的で使用するかどうかはあくまで本人次第である」。これが私を含めた「アプリ許容派」の考え方なのだ。

 

(*)ブリーディング=日本でユーザー数No.1のゲイ向け出会い系アプリ(通称「ピンクのやつ」)において実装されている機能。SNSにおけるいいね!の強意版。他ユーザに対して「あなたのことがタイプです」ということを伝える婉曲的な手段。

 

■ 

 

出会い目的でなければ、何目的なのか?

 

これは個人差があるが、私のケースを言わせていただければ、せっかくここまでユーザーレベル(*)を上げたのに、そのセーブデータを消すなんてもったいないという"育成ゲーム的"な思いや、たまに受信する「かっこいいですね^_^」系のメッセージに自己肯定感の高まりを感じたいとか、その程度のものである。続けることに大したこだわりはない。相手に消せと言われれば、(泣く泣く)消す覚悟はある。

 

(*)ユーザーレベル=一定数のブリーディングが得られる毎に上昇していくレベル。ゲイ界隈の深刻なカースト化の遠因。

 

Level.2:文面接触(Message Contact)

さぁ。徐々に雲行きが怪しくなるのが文面接触だ。

 

というのも大小こそあれ、ここからは確実な"下心"があるからである。

 

アプリを入れているだけであれば、私のような自己満ユーザーの可能性もあるが、特定の誰かとメッセージを始めるという行為には「もしかしたら...」というその先の展開に対する期待が見え隠れするというわけだ。

 

しかしながら、ここで線引きしている人(=アプリは入れていていいけど、メッセージはダメって人)は、正直あまり見かけない。アプリのダウンロードを許容している時点で、メッセージくらいなら許容されている気がする。ソースはない。

 

Level.3:対面接触(Real Contact)

ここでついに相手と邂逅する。つまりリアル。

 

流石にここから浮気という人が多いのではないかと思う。

 

もちろん、純粋に食事だけみたいな性的な目的以外のリアルもある。

 

しかし私の経験から言って、当初は食事だけのつもりだったが、デザート(隠語)も付いてきてしまったということは往々にしてある。性的潔白という名の領土を死守するためにも、この辺りに絶対国防圏を設定することが望ましい。

 

Level.4:物理接触(Physical Contact)

物理的な接触。手を繋ぐ。肩に頭を乗せる。もうこれは恋人とすることじゃん。はいはい浮気浮気。

 

......と私は思っているのだが、世界広しとは言ったもので、世の中には添い寝フレンド、通称「ソフレ」という関係性があると聞く。それは添い寝という濃厚な物理接触がありながら、決していやらしさは無いものらしい。実に不思議な関係である。残念ながら、私は専門外の分野。

 

もちろん私にも友人宅で宅飲みした際に、友人と同じベッドで寝た経験は何度もあるが、あくまで相手が友人(*)の場合に限る。私はタイプの方と添い寝までして、添い寝までで我慢できる自信はない。

 

(*)同性に恋をするゲイにとっては、「友人」の定義も実に複雑だが、ここでは性的な感情を一切抱かない人物とする。

 

 

昔、私が思いを寄せる人の家にお泊りすることになって、それなのにセックスまでは合意に至らずに添い寝までとなった夜があったのだが、あれはホントに生き地獄であった。(下半身の)興奮が収まらず、一睡もできなかったのだ。大好きなエサが目の前にあるのにお預けを食らっている犬のようだった。鼻息を荒げて、あからさまなムラムラアピールをしてみるも、その相手は頑としてセックスさせてくれなかった。

 

しかし全く収まる気配のない某棒を持て余した私は、最終的に数時間にわたって相手の尻に自分の元気なソレを押し付け続けるというおおよそ人間の考えとは思えない夜を過ごした。でも許してほしい。私は必死だったのだ(なんだこれ、猿なのか)。

 

やがて夜が明け、その日は平日だったので朝早く相手の家から帰ったのだが、帰り道は自分の欲望を抑えられなかった不甲斐なさと、相手に受け入れてもらえなかったショックで抜け殻のようになっていた。結局その日は会社を休んだと記憶している。

 

だから、私はソフレを決して認めない。それを認めることは、あの日の自分を猿と認めると同義だからだ。あれは人間の自然な振る舞いであったと、今でも私は思っている。異論は認めない。

 

Level.5:粘膜接触(Sexual Contact)

いや、これはもうアウトですよ。もうここまできたら浮気以外の何者でもない。夫婦であれば離婚の原因。ここまでして浮気じゃないなんて、どんだけ図太い神経してるの?縄文杉なの?死ぬの?さっさと覚悟を決めた方が良い。

 

「セックスまではしてない!Aまでだったんだ!」という言い方がいるかもしれないが、ダメです。浮気です。

 

そもそも、私としてはセックスよりもA(=キス)の方がハードル高いんですが、これは少数派でしょうか。

 

セックスはもう、アレをアソコに入れて物理的にシコシコしたりしてるんだから、気持ち良いのは当たり前。それに対して、キスはそれ自体で気持ち良いわけではないから(えそうですよね?)、気持ち良い領域に達するには、大部分を感情の面で補わなければならない。

 

そうやって浮気相手に感情を移入していくことは、アレをアソコに挿入していくことよりも罪深い。そういった感覚から、セックスはできてもキスは無理という人はいても、キスはできてもセックスは無理って人はいないのではないか、と私は思う。そしてそれは「ゲイ向けのアダルトビデオにおいて、ノンケモデルが男性のあそこに自分のアレを挿入しつつ、上半身では女性とチュッチュするという3Pはよく見かけるが、その逆はあまり見かけない」という事実によって裏付けられる。

 

......まあいい。どっちも浮気。アウトです。

 

beyond 5:融合(Fusion)

これ以上の接触については、あくまで参考に過ぎない仮説のお話として聞いて欲しい。でも、粘膜接触以上であるわけだから、残すはもう「融合」しかないのではないかと私は思う。具体例を挙げるとすれば、『新世紀エヴァンゲリオン』においてしばしば見られる"取り込まれる"という現象である。

 

エヴァ初号機に取り込まれた『碇ユイ』。第10使徒に捕食された『綾波レイ』。さらに人類補完計画発動時によって引き起こされる、全人類のL.C.L.(Link Connected Liquid)への還元。

 

しかし、ここまでくると浮気か否かの議論の前に、そもそも人としての形をとどめていないわけである。浮気行為の前提として、自分という個体とそれとは別個体の他者の存在があると思う。つまり、自分と他者の境界(=A.T.フィールド)が消滅した状態においては、浮気という概念すら存在していないのではないだろうか。

 

いずれにしても、我々が生きている間にここに到達するものはいないだろう。したがって、今回においては、浮気の前提条件として「A.T.フィールドの保持」を加えるものとし、この接触を分類対象外とする。

 

 

長い説明になってしまったが、接触の定義の説明については以上だ。

 

......さぁ。お伺いいたします。

 

「あなたの浮気は、どこから?」

 

私は......

 

(つづく)

 

 

 

 

次回予告

浮気の定義を明確化するために、接触の段階について長々と語った私。

ブログ読者への浮気の線引きの問い掛けをしてみたものの、「人に聞く前にまず自分からじゃね?」ということに気が付いた私は、自分の浮気の定義を決定づけた過去の経験について語ることを決意する。

 

えっー?!アクセス数稼ぎたいからってそんなことまで話しちゃうのぉ~?大丈夫ぅ~?!

 

 

 

 

 

 

次回!

 

『城之内、死す』

 

この次も、サービスサービスぅ!!