迎春記

― 手持ち無沙汰なあなたに贈るゲイの小噺 ―

自主隔離な土日。

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本当だったら、今頃は東久留米にある「スパジアム」へ向かっている頃だと思う。

 

だけど今朝は朝食を食べた後で部屋に掃除機をかけて、そのあとでゴミ出しをして、何だか眠くなってきたので軽く二度寝をし、今こうしてブログを書いている。

 

 

先週の月曜日に友達のジュンからLINEが来た。

 

「来週の土曜日、タイシを昼間の間だけ外に連れ出してくれない?」

 

ジュンとタイシはカップルだ。そして同棲している。

 

来週の土曜日、つまり今日にあたる4月4日はタイシの誕生日であり、夕方からタイシへのサプライズパーティを計画しているジュンからの頼み事だった。タイシのためにジュンが料理をふるまうらしい。

 

ジュンとタイシのカップルとは、カップル同士で仲良くさせてもらっている。

 

ジュンはどこかサバサバしているような雰囲気を持っている人だ。一緒に宅飲みをして、ほろ酔いになったタイシがジュンの肩に体を預けたときには、「ちょっと何してんの!」とタイシを引きはがしてしまうくらい、人前でいちゃつくのが嫌いな様子だったから。

 

だから、サプライズパーティを計画するなんてちょっと意外だった。

 

それに料理が得意なのは、ジュンよりもタイシのはずだ。

 

タイシの家では定期的にホームパーティが開催され、タイシの料理がふるまわれる。そのどれもがお店で出してもいいようなクオリティで、しかも食べきれないくらいのフルコースで出される。そして会費も安い。

 

クリスマス、忘年会、新年会。それは全てタイシ(とジュンが住む)家で開催された。

 

あのサバサバっとしたジュンが、料理上手なタイシに逆に料理をふるまう計画。

 

タイシが驚き、そして喜ぶ顔を想像するだけで何だかホッコリとする。

 

「もちろん、シュンと清人さんの分の料理もあるから」

 

ジュンはタイシの友達を何人か集めるらしい。

 

そんな訳で、僕と僕の恋人の清人はジュンの計画に協力し、今日はタイシを連れ出すため、お昼からスパジアムに誘っていた。

 

 

しかし、それからじわじわと水面下でくすぶっていた日本のコロナ禍が、いよいよ猛威を見せ始めてしまった。

 

"3密"が揃った場所に行くのは止めよう。

 

6人ぐらい集まっていた、ジュン&タイシ家でのサプライズパーティは、まさに3密の代名詞とも呼べるものになってしまい、間もなく中止の連絡がきた。

 

残念だけど、仕方がない。

 

しかし、僕は中止にならなかったとしても多分行かなかったと思う。というか、行けなかったと思う。

 

なぜなら。

 

今週、僕の会社からコロナ感染者が出てしまったからだ。

 

 

同じ会社と言っても働いている建物は違うし、そもそも今週の水曜日からは在宅勤務になっている。濃厚接触の可能性は低い。

 

だけど、先週の水曜。僕はたまたま感染者が出た建物に行っていた。

 

......健康診断で。

 

健康状態を見るために行ったせいでコロナに感染するなんて、そんな皮肉なことは起こるはずがないと思いたいけれど、万が一があるので来週末くらいまでは自主隔離することにした。

 

今日も、サプライズパーティが中止になり、いつも通り恋人の清人と過ごそうと思ったけれど、それもやめた。

 

久しぶりの一人きりの土日。

 

まぁ。一人で過ごすのはそんなに嫌いじゃないからいいけど。

 

 

最近はニュースを見る度に、コロナの感染者が増加していく。

 

もう見るのが嫌になって、テレビをつけなくなってしまった。

 

ふと、数年前に僕らのチームが開発したソフトウェアにバグがあることが出荷直前にわかって、納期ギリギリに、バグの消し込みや再評価試験でてんやわんやになったことを思い出す。

 

この時、偉い人達が「一体いつ試験は終わるんだ!」「何時何分に終わるんだ!」といった煽りメールを山の様に送り付けていた。

 

そうしたら、若手の試験担当者の一人が

 

「どんなに煽られても、終わらないものは終わりません!」

 

と怒りをぶちまけた。部署全体に回る一番大きなメーリングリストを使って。

 

それから、煽りメールの勢いは和らいだ。

 

あの時の若手の気持ちが今ならわかる。

 

ニュースでどんなに不安を煽ろうと、僕にできるのは不要不急の外出を避け、外出するときにはマスクをつけることしかない。

 

感染者が何千人になろうと、何万人になろうと、できることは同じだ。

 

ならば、不安を煽るニュースなんて見たくない。

 

テレビを消すと、外では小鳥が鳴いていて、空からは飛行機のジェットエンジンの音、海が近い僕の家からは遠くで船の汽笛が聞こえた。

 

それは至ってのどかな春の休日だった。

 

こっちの方が絶対に良い。

 

 

そう思っていると友達からLINEが来た。

 

「マスク2枚なんて、もらっても役に立たないよね笑」

 

そのニュースは僕も知っていた。

 

"アベノマスク"っていう呼ばれ方が、何だかうまい具合に皮肉っている感じがして好きだった。

 

1住所に布マスク2枚を配布。

 

確かにマスクはどこに行っても買えないし、洗って繰り返し使える布マスクがあるのは心強い。ネットを見てると、布マスクは効果ないなんて記事があるけど、全くマスクをしないよりは良いんじゃないのかなと思う。

 

でも、国がマスク2枚配布って。笑

 

即効性のある対処を望んでいる人が明らかに多いのに、そのはるか遠くにある外堀を埋めるようなことから始めたなぁという印象だった。

 

感染拡大にはきっと効果あるんだろうけど。

 

 

即効性がある対処と言っても、経済を動かすために一律10万円を配布って案もちょっと違うかなと思っていた。

 

僕みたいな会社員は収入は減ってないし、在宅勤務中にネットショッピングをするようになって、むしろ支出は増えている。昨日は新しい本棚と、デスクの下に敷くマットを買った。

 

Twitterを見てもNintendoスイッチを買ったり、可変式ダンベルを買ったりとそれなりに経済を回している人が多そうに見える。

 

だからきっと、10万円を一律配布したところで、「バラマキだ!」とか「一律なんて不公平だ!飲食業界を手厚くしろ!」とか叩かれていたんだろうなって思います。

 

「総理大臣」ってのもなかなか大変なお仕事ですよね。