迎春記

― しがないゲイの小噺 ―

自主隔離な土日。

本当だったら、今頃は東久留米にある「スパジアム」へ向かっている頃だと思う。だけど今朝は朝食を食べた後で部屋に掃除機をかけて、そのあとでゴミ出しをして、何だか眠くなってきたので軽く二度寝をし、今こうしてブログを書いている。

先週の月曜日に友達のJからLINEが来た。来週の土曜日、Jの恋人であるFを昼間の間だけ外に連れ出してくれないかという要件だった。JとFのカップルとは日頃から仲良くさせてもらっているのだが、来週の土曜日はFの誕生日であり、夕方からFへのサプライズパーティを計画しているらしい。Jはどこかサバサバしているような雰囲気を持っている人だったから、サプライズパーティを計画するなんてちょっと意外だった。それに料理が得意なのは、JよりもFのはずだと思っていた。Fの家では定期的にホームパーティが開催され、Fの料理がふるまわれる。そのどれもがお店で出してもいいようなクオリティだった。クリスマス、忘年会、新年会。今までそれは全てFの家で開催された。

あのサバサバっとしたJが、料理上手なFに逆に料理をふるまう計画。Fが驚き、そして喜ぶ顔を想像するだけで何だかホッコリとする。そんな訳で、私と恋人のKはJの計画に協力し、今日はFを連れ出すため、お昼からスパジアムに誘っていた。

しかし、それからじわじわと水面下でくすぶっていた日本のコロナ禍が、いよいよ猛威を見せ始めてしまった。6人ぐらい集まっていたサプライズパーティも間もなく中止の連絡がきた。残念だけど、仕方がない。

しかし、私は中止にならなかったとしても行けなかったと思う。なぜなら。今週、私の会社からコロナ感染者が出てしまったからだ。同じ会社と言っても働いている建物は違うし、そもそも今週の水曜日からは在宅勤務になっている。濃厚接触の可能性は低い。だけど、先週の水曜。私はたまたま感染者が出た建物に行っていた。......健康診断で。健康状態を見るために行ったせいでコロナに感染するなんて、そんな皮肉なことは起こるはずがないと思いたいけれど、万が一があるので来週末くらいまでは自主隔離することにした。

最近はニュースを見る度に、コロナの感染者が増加していく。もう見るのが嫌になって、テレビをつけなくなってしまった。ふと、数年前に同じチームが開発したソフトウェアにバグがあることが出荷直前にわかって、納期ギリギリに、バグの消し込みや再評価試験でてんやわんやになったことを思い出す。この時、偉い人達が「一体いつ試験は終わるんだ!」「何時何分に終わるんだ!」といった煽りメールを山の様に送り付けていた。そうしたら、若手の試験担当者の一人が「どんなに煽られても、終わらないものは終わりません!」と怒りをぶちまけた。部署全体に回る一番大きなメーリングリストを使って。それから、煽りメールの勢いは和らいだ。あの時の若手の気持ちが今ならわかる。ニュースでどんなに不安を煽ろうと、私にできるのは不要不急の外出を避け、外出するときにはマスクをつけることしかない。感染者が何千人になろうと、何万人になろうと、できることは同じだ。ならば、不安を煽るニュースなんて見たくない。

テレビを消すと、外では小鳥が鳴いていて、空からは飛行機のジェットエンジンの音、海が近い私の家からは遠くで船の汽笛が聞こえた。それは至ってのどかな春の休日だった。こっちの方が絶対に良い。そう思っていると友達からLINEが来た。「マスク2枚なんて、もらっても役に立たないよね笑」。そのニュースは私も知っていた。"アベノマスク"っていう呼ばれ方が、何だかうまい具合に皮肉っている感じがして好きだった。1住所に布マスク2枚を配布。確かにマスクはどこに行っても買えないし、洗って繰り返し使える布マスクがあるのは心強い。ネットを見てると、布マスクは効果ないなんて記事があるけど、全くマスクをしないよりは良いんじゃないのかなと思う。でも、国がマスク2枚配布とは、即効性のある対処を望んでいる人が明らかに多いのに、そのはるか遠くにある外堀を埋めるようなことから始めたなぁという印象だった。感染拡大にはきっと効果あるんだろうけど。

即効性がある対処と言っても、経済を動かすために一律10万円を配布って案もちょっと違うかなと思っていた。私みたいな会社員は収入は減ってないし、在宅勤務中にネットショッピングをするようになって、むしろ支出は増えている。昨日は新しい本棚と、デスクの下に敷くマットを買った。Twitterを見てもNintendoスイッチを買ったり、可変式ダンベルを買ったりとそれなりに経済を回している人が多そうに見える。だからきっと、10万円を一律配布したところで、「バラマキだ!」とか「一律なんて不公平だ!飲食業界を手厚くしろ!」とか叩かれていたんだろうなっと思う。「総理大臣」ってのもなかなか大変なお仕事ですよね。