迎春記

― 手持ち無沙汰なあなたにしがないゲイが小噺を ―

2週間の恋 (8)

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こんばんは、しゅんです。『2週間の恋』の第8話です。

 

目次

はじめに:2週間の恋 (1) - 迎春記

第1章  邂逅:2週間の恋 (1) - 迎春記

第2章  予感:2週間の恋 (2) - 迎春記

第3章  再戦:2週間の恋 (3) - 迎春記

第4章  審議:2週間の恋 (4) - 迎春記

第5章  交流:2週間の恋 (5) - 迎春記

第6章  謀略:2週間の恋 (6) - 迎春記

第7章  切札:2週間の恋 (7) - 迎春記

第8章  変化(1):2週間の恋 (8) - 迎春記

第9章  勝敗:2週間の恋 (9) - 迎春記

第10章  暗転:2週間の恋 (10) - 迎春記

第11章  変化(2):2週間の恋 (11) - 迎春記

最終章  帰結:2週間の恋 (12) 終 - 迎春記

エピローグ:2週間の恋 (12) 終 - 迎春記

あとがき:2週間の恋 (12) 終 - 迎春記

 

今回のお話

第8章  変化(1)

 

お付き合いを始める前のセックス。これに関しては、賛否両論なところがあると思うのですが、僕個人としてはどっちでも良いかなと思っています。

 

僕には性的欲求がありますので、相手のことが好きで、相手もそうであれば遅かれ早かれやることだと思っていますし、それが付き合う前だろうと、後だろうと気持ちに変化はないと思っているからです。互いに思いやる気持ちが確かなものであればね。

 

もし付き合う前にセックスをした結果、何だか相手の熱が下がってしまったような気配を感じたなら、それは相手にとってはセックスが重要な目的だったということでしょう。

 

 

僕はセックスが好きですが、恋愛においてはそこまで重要だとは思っていません。

 

というのも、セックスってその時は本当に最高なのですが、後にはほとんど何も残らないからです。

 

例えば、付き合っていた相手と別れてしまったとして、その時に思い出されるものというのは、初めて一緒に行った山の山頂で飲んだコーヒーの味とか、トランジットに失敗して海外の空港で明かした夜のこととか、一緒に餃子を作った時に、相手の作ったはみ出るくらい餡を包んだ餃子が一番美味しかったこととか、そういうものだと思います。

 

あぁ、あいつとのセックスは最高だったなってならないでしょう。...いや、決めつけは良くないか。少なくとも、僕はなりません。

 

僕にとって恋人との思い出として残るのは、セックスしている時のことよりも、セックスしてない時のことの方が何倍も、何十倍も多いのです。

 

だから、恋愛においてセックスはそこまで重要じゃない。

 

 

とはいえ0だとさすがにキツイ。僕にとっては生理現象みたいなところがあるから。

 

何て言うか、恋愛に対してセックスの占める「比率」みたいのが、自分の中にあるんだと思います。

 

だから誰かと付き合う上で、セックス自体はそれほど重要じゃないと思っていますが、それが恋愛に占める比率に関しては自分と近い人であって欲しいなとは思っています。

 

そう考えると、事前にセックスするってのも、セックス前後の態度の変化から相手のセックスの占める比率を感じ取れるので、案外悪くはないかもしれないですね。

 

ただ良くないのが、セックスのもたらす印象があまりに強力すぎて、その時に相手の比率はこれだと決めつけてしまいがちということです。

 

人の気持ちというのは変わるもの。

 

この比率もまた同じです。...知り合って間もない頃は特にね。

 

最初は体目的だったけど、相手を知るうちに中身に惹かれていき、自分の中でセックスの占める比率が相対的に小さくなっていく。そんなこといくらでもありますから。

 

 

と考えると、やっぱりセックスは強力な切札でありながら、万能ではありません。

 

大富豪では、JOKERは最強、かつどんなカードにも化ける強力なカードですが、最後にそれで上がると次は大貧民になってしまうというペナルティも付いています(ローカルルールは知らん)。

 

やはり使いどころは慎重に考えなければいけないのです。

 

◎Day -7

 

さて、付き合う前にセックスをしてしまった僕と雅人ですが、それを期に何か大きな変化があったかと言うと、幸いなことに、そういうことはありませんでした。翌週からも雅人とは毎日電話をしました。

 

ただ1つだけ変化がありました。

 

それは、僕の話を良くするようになったということです。

 

先週は僕の場所有無情報について伝えていなかったために、思わぬ一夜を過ごすことになりました(僕としては大満足だったんですけど)。

 

でもこれからはそういった想定外の事態が起こらぬよう、お互いの情報についてはしっかりと共有していかなければいけないと、僕が思ったからです。

 

僕は今まで雅人に質問してきたことを雅人に話しました。

 

 

しかし、それに伴って雅人とちょっとした口論が起きるようになってしまいました。

 

常に他人に迎合して生きてきた僕と違って、雅人は自分の好きなものは好き、嫌いなものは嫌いとハッキリ意見を言う子だったからです。

 

例えば、好きな芸能人について話をしていた時のこと。

 

僕は「石田卓也」が好きでした。

 

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爽やかな笑顔と、真剣な表情をしたときのちょっとイカつい感じが最高です。多分『リアル鬼ごっこ』とかが有名かな。周りにあまり知っている人いないんですが...。

 

雅人も石田卓也のことを知らないようだったので、LINEでその画像を送ってあげました。送ったのがこの画像です。

 

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引用:https://www.oricon.co.jp/news/71519/photo/2/

(※粗くてすみません。でも本当に送った画像です)

 

するとこれを見て雅人が言ったのです。

 

「え。俺と全然似てなくない?」

 

迂闊でした。

 

何も考えずに僕が一番お気に入りの石田卓也を送ってしまいました。色黒、短髪の石田卓也を。

 

色黒はまだ仕方がないとして、せめて前髪を伸ばした石田卓也の写真にすれば良かった。そんな画像、調べればいくらでもあったのに。どうして、雅人が見たときの反応まで頭が回らなかったのだろう。

 

「しゅん、本当に俺のこと好きなの?」

 

そう尋ねる雅人の声色には、明らかに非難の色がのっていました。

 

しかし、この時僕は、「好き」という気持ちの"確からしさ"について、言葉で証明するための術を持ち合わせていませんでした。いや、それは今でも持っていません。というかそんな術、この世に存在しないのではとさえ思い始めています。

 

僕が必死に「好きだ」と繰り返すほど、伝わる想いはどんどん嘘っぽいものになっていきました。

 

そして全く機嫌の直らない雅人に、僕は最終的に「ごめん」と言ってしまいました。

 

もちろん、この「ごめん」は好きだという気持ちを証明できなかったことに対する謝罪であり、決して雅人のことを本当は好きでないということを認めてしまうような謝罪ではありません。

 

まぁそんな丁寧な補足をしたわけではありませんから、この時雅人に正確に伝わったかどうかはわかりませんが。

 

◎Day -2

 

しかし、そんな口論があった翌日も、雅人からは「今日電話できる?」とLINEが来ました。何事もなかったかのように。

 

僕は一瞬ホッとするのですが、決して手放しで安心できるものではありませんでした。

 

本当に何も気にしていないのか?それとも気にしていないフリをしているだけなのか?

 

そこを推し量るにはまだ付き合いが短すぎました。電話での会話だとしたら尚更。

 

いずれにしても、今後は雅人の機嫌を損ねるようなカードを提示してはならないと思うようになりました。

 

 

今思えば、こういうところがまだまだ恋愛経験の浅かったところだったなって思います。

 

こうやって、何か衝突があった際に、例えそれがどんなに些細なことであっても、「嫌われないようにしなきゃ...」と思ってしまっていたところです。視野が狭かったなって。

 

長く付き合っていくとしたら、どうしても合うこと、合わないものが出てくるのですから、それら全てが相手とぶつからないようにするなんて土台無理な話なのです。

 

もちろん、何もかもが自分に一致した"運命の王子様"的な方もいるのかもしれませんが、それを探すには「人生100年時代」と言えどまだ難しいでしょう。

 

この時の僕は必死でした。

 

必死になって、雅人の枠に自分を押し込もうとしていました。

 

きっと付き合うことが「ゴール」になってしまっていたんだと思います。そんなの、ただの「スタート」に過ぎないのに。

 

今では、長く付き合うためには、お互いの合わないところすら受け止めてくれるような、そんな"歩み寄りの余白"を持った人が自分には良いと考えています。

 

だから、雅人と長く付き合っていくつもりだったのなら、あの時僕は好きな芸能人の話での衝突なんかでひるむことなく、堂々としていれば良かったのです。

 

まぁ僕がそう考えるようになったのは、残念ながら雅人の次の恋愛の時のことですけど。

 

その恋というのがまた僕の人生史上で一番辛い片思いで...って、そのことに関しては次回作としておきましょうかね。そっちは長編小説になりそうですから。

 

 

この日は雅人から思わぬお誘いがありました。

 

「今週の土日、親が家にいないんだけどうちに泊まりに来ない?」

 

この提案には、雅人の心の内を伺っていた僕もさすがに安心しました。

 

自分は気にしすぎなのかもしれない。

 

僕は快諾しました。

 

明後日。それが、"その日"となりました。

 

(つづく)

 

★次のお話:

2週間の恋 (9) - 迎春記

★前のお話:

2週間の恋 (7) - 迎春記

 

 

連絡事項

 

いつもお読みいただきありがとうございます。^^

 

やっと"あの日"の前まで話が進みました。間もなくスタート地点です。いやぁ、長かった。まぁここからはきっとあっという間でしょうから、皆さんも頑張って付いてきてくださいね。笑

 

今週も週末の小説更新はありません。

 

恋人さんと伊香保温泉に行ってきます!

 

それでは、皆さん。良い週末を。