迎春記

― 手持ち無沙汰なあなたに贈るゲイの小噺 ―

2週間の恋 (7)

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こんばんは、しゅんです。『2週間の恋』の第7話です。

 

ちょっと悩みができたので、ご報告。

 

このブログに関しては、今の恋人さんも存在だけ知っているのですが(URLは知らない)、この前僕が口を滑らせて、今元彼と知り合ってから別れるまでの話を題材にした小説をブログで書いてると言ってしまったら、案の定「読みたい!」と言われてしまいました。

 

やっちゃいました。笑

 

って言っても、別に小説自体を読まれることは全然問題ないんですよ。過去の話ですから。

 

まぁ僕が逆の立場だったら良い気分はしないと思いますけどね。過去の話とはいえ、今の彼氏が元彼にアプローチしていく描写を読むのなんて。読みたい気持ちもわからなくもないけど。

 

僕が気にしているのは、このブログのURLを知られて、今後ブログで恋人さんネタを書きづらくなったらやだなぁって。あと過去記事で結構恥ずかしいこと書いてるし。

 

どうしようかな。やめとこうかな。

 

...あ、それだけです。

 

目次

はじめに:2週間の恋 (1) - 迎春記

第1章  邂逅:2週間の恋 (1) - 迎春記

第2章  予感:2週間の恋 (2) - 迎春記

第3章  再戦:2週間の恋 (3) - 迎春記

第4章  審議:2週間の恋 (4) - 迎春記

第5章  交流:2週間の恋 (5) - 迎春記

第6章  謀略:2週間の恋 (6) - 迎春記

第7章  切札:2週間の恋 (7) - 迎春記

第8章  変化(1):2週間の恋 (8) - 迎春記

第9章  勝敗:2週間の恋 (9) - 迎春記

第10章  暗転:2週間の恋 (10) - 迎春記

第11章  変化(2):2週間の恋 (11) - 迎春記

最終章  帰結:2週間の恋 (12) 終 - 迎春記

エピローグ:2週間の恋 (12) 終 - 迎春記

あとがき:2週間の恋 (12) 終 - 迎春記

 

今回のお話

第7章  切札

 

僕は雅人に正直に話す他ありませんでした。

 

僕の家に連れて帰ることは出来ないこと、そしてきっともう終電にも間に合わないだろうということを。

 

「え!?じゃどうすんの!」

 

それは雅人から向けられる初めての非難の刃でした。僕は泣きそうになっていました。

 

ただ不幸中の幸いだったのが、そこが「眠らない街」新宿だったということです。2人が夜を明かすための手段なんていくらでもあるでしょう。そこから雅人が一番望む"正解"を探ればいい。

 

僕のいつもの脳内会議がまた始まりました。

 

どこかのゲイバーでオールする?

 

...いや、僕に行きつけのゲイバーなんて無いし、新規開拓するような勇気もない。

 

じゃ、カラオケオール?

 

...いや、そういうことでもないはず。この雰囲気じゃ絶対楽しめない。

 

え、発展場...?

 

...だめだ、それは悪手すぎる。

 

そんな問答が頭の中でありましたが、僕には既に自分の中で答えが出ているとわかっていました。

 

雅人は僕の家に来たいと言っていたのです。

 

きっと、そういうことでしょう。

 

「どこか入れるホテル探そっか」

 

雅人が小さく頷きました。

 

やっぱり、それが正解か。

 

 

ホテルと言っても、探したのは男女が行くようなラブホテルではなくて、もちろん普通のビジネスホテルです。

 

でも土曜日ももう日を跨ごうとしているこの時間。空いているビジネスホテルを探すのは中々に難儀なことでした。

 

僕は「新宿 ビジネスホテル」で検索し、Google mapにピンが表示されているホテルに片っ端から電話をしていきました。

 

断られる度に、僕は本当に泣きそうになる思いがしました。

 

 

何軒目だったでしょうか。ついに空室のあるホテルが見つかりました。

 

花園神社の裏手にある小さなホテルが、ダブルベッドの喫煙部屋であれば1部屋だけ空いているというのです。

 

僕は雅人に確認もせずにその部屋を取りました。

 

ホテルの予約が取れ、行く宛ができると、さっきまで不安そうに僕の様子を見ていた雅人もどこか表情が柔らかくなり、ピリッした空気もなくなりました。

 

一番安心したのは何よりこの僕です。

 

そして僕の心から不安が消えると、その空いたスペースには、これから雅人とホテルへ行くのだという事実がじんわりと染み込んできました。

 

雅人の方もきっと同じような気持ちだったんじゃないかなって思います。

 

僕らは口数少なにホテルへ向かいました。

 

確か中学の時。軟式テニス部の公式試合で、ダブルスのペアと一緒にコートに入る時も、確かこんな気持ちだったなと思い出しました。

 

 

僕の予約したホテルは本当に昔ながらのビジネスホテルでした。

 

外には外階段がついていて、1階には居酒屋が入っていました。どうやら階段を登った2階がフロントのようです。2階と3階の間の壁面には看板が付いており、黄緑の蛍光色の背景に白抜きのゴシック体で書かれたホテル名は、遠くからでも簡単に読むことができました。

 

僕らは2階へ上がり、誰もいないフロントの呼び鈴を鳴らすと、奥から背の低い、少しふくよかな女性が出てきました。

 

「先ほど電話で予約したものなんですが」

「あー。じゃこちらの宿泊票にご記入ください」

 

ダブルベッドの部屋に男が2人。

 

どんな風に見られていたのでしょうか?まぁ新宿なら良くあることかも知れませんね。

 

その女性は特に表情を変えることもなく、事務的な処理をして部屋の鍵を渡してくれました。

 

そして、僕らは部屋へ向かいました。

 

 

部屋に入り、入口の壁際にあるポケットにルームキーを差し込みました。

 

ベッドのサイドテーブルにある暖色系のランプが点灯し、ぼんやりと明るくなった室内。

 

あーやっぱ狭いなぁ。

 

そう思った瞬間です。

 

雅人が僕を引き寄せて、そしてキスをしてきました。唇に。

 

突然の、そして力強い引き寄せに、僕はよろけて、部屋の廊下の壁に付いていた姿見に雅人を押し付けてしまいました。

 

「あ、ごめんっ」

 

そう慌てる僕に、雅人は真剣な眼差しを向けていました。

 

まだ少し驚いていましたが、雅人の顔が意味することは、流石の僕にもわかりました。

 

もう試合は始まったということです。

 

そんな真剣な雅人に比べて、姿見に映る自分は、緊張して強張った情けない表情をしていました。

 

こんなんじゃダメだ。

 

 

僕は気持ちを切り替えて、今度は僕の方からキスをしました。

 

すると、その次はまた雅人の方から。

 

最初は軽いキスだったものが、繰り返しているうちに次第に濃厚なものになっていきました。

 

そして、気がつくと雅人の顔に既視感のようなものを感じました。

 

この顔どこかで...

 

...

 

あ。

 

一緒に卓球をした時の顔だ。

 

ネットの向こうで僕のサーブを待ち構えている時の。

 

あの、"雄"の顔。

 

その顔に僕は心の奥の何かが高ぶるのを感じ、雅人をベッドに連れて行きました。

 

仰向けに倒れた雅人に跨る僕。

 

雅人がその茶色い瞳でまっすぐ僕を見つめてきます。

 

僕は雅人が来ている服の、その下にある身体を見たいという衝動を抑えられなくなり、ついにその服を脱がせました。

 

露わになった雅人の上半身は、思っていた通り真っ白で美しく、オレンジ色のルームランプに照らされたその身体は、柔らかな新雪が降り積もるナイターのゲレンデを思わせました。

 

しかし手で触れれば、それは雪と違って確かな熱をもった滑らかな表面。手の平からは雅人の暖かな体温が伝わってきました。

 

また、遠目からはわかりませんでしたが、顔を近づけてよく見ると、雅人の腹部にはボコッとした起伏がしっかりとあり、そして毛の殆ど生えていない脇からはスーッと血管が浮き出た男らしい腕が伸びていました。

 

僕は我慢が出来なくなって、自分の着ていたシャツを急いで脱ぎました。

 

手のひらだけでなく、もっと自分の身体全体を直接触れ合わせたい。そんな衝動に駆られたからです。

 

僕は雅人の胴に両手を回すと、その胸に耳を当ててみました。

 

すると、心地よい鼓動が聞こえてきました。そして、鼻から息を吸い込むと雅人の匂いがしました。

 

そして僕の臍のあたり。そこへ雅人の両足の間から、何かが当たるような確かな感覚を受けました。

 

雅人のズボンを脱がせる僕。

 

露わになった黄色いボクサーブリーフからは、ふわっと柔軟剤の香りが広がりました。

 

徐々に自分の心拍数が上がっていくのを感じます。

 

そして雅人の臍の下から始まる、薄っすらとした一筋の毛並みを見ました。それは雅人の下着の中央の丘陵へと真っ直ぐと伸びていました。

 

僕はその松林を指を使って臍の方からスルスルと辿っていき、やがてたどり着いた下着のゴムの、既に僅かに浮き上がったその隙間にそのまま指をかけて、ゆっくりと持ち上げました。

 

すると、持ち上げたはずのゴムに沿うようにして、それがいよいよ露わになりました。こんもりとした森の中にそびえ立つ、雅人のそれが。

 

 

不意にあの時の気持ちが蘇ってきました。

 

小学4年生の時、沖縄のホテルの脱衣室でヒロ先輩のそれを見たときのあの気持ちが。

 

"触れてみて、匂いを嗅いでみて、そして舐めてみたい"

 

僕は、あの時出来なかったことを全てやりました。

 

 

雅人のそれを右手で握り込むと、ちょうど親指と中指が触れ合うぐらいの周囲があり、手のひらには「暖かい」を少し通り越したくらいの熱と、僅かな脈動が伝わってきました。

 

そしてそれを右に少し傾けて顔を近づけると、根元には少しだけ湿り気を感じる空気があり、それは微かに汗の匂いがしました。

 

その匂いを嗅いだ時、徐々に反応していた自分のものが、いよいよ下着の中で跳ね上がるのを感じて、僕もズボンと下着を脱ぎ去りました。

 

...え?味、ですか?

 

正直あまりしなかったと思います。たまに少し塩っぱいような味と、とろみのある舌触りがあったような気がしたくらい。

 

ただ、僕がそうやって味を確かめようとすればするほど、雅人の息遣いが荒くなっていったのは覚えています。

 

 

その夜。

 

僕らはそうやってお互いの全てを見せ合いました。

 

現実と夢の間で、身体が芯から溶ろけていくような時間でした。

 

 

翌日。

 

僕はカーテンの隙間からの光で、部屋の隅々までわかるくらい明るくなってから目覚めました。

 

ベッドの足元の床には、昨日脱ぎ散らかした服やら靴やらが散らばっていました。

 

そして間もなく、鼻につくタバコの臭い。

 

そういえば、ここ喫煙部屋だったっけ。

 

どちらが先に起きたのかは分かりませんが、隣では雅人が眠そうに大きく伸びをしていました。

 

相変わらず毛の生えてない綺麗な脇に見惚れていると、僕は自分たちがまだ裸であることを認識しました。

 

あ。

 

僕は雅人についてあと一つだけ見ていないものがあることに気がつきました。

 

布団をチラッとめくりました。

 

見ておかねば。"平常時"の雅人を。

 

僕の急襲に慌てて布団を奪い取った雅人の顔には、照れと、そしていつものマシュマロのような柔和さが戻っていました。

 

僕はそんな雅人が愛おしくなって、改めてキスをしました。昨晩の出来事が夢じゃないことを確かめるように。長めのキスを。

 

口を離した後、目が合うと、僕も雅人も思わずはにかみました。

 

そして、僕はそんな雅人にもう一度だけ軽いキスをしました。

 

 

翌日の日曜日は、僕が夕方からバレーサークルのある日でした。

 

確かその前にサークルの人に紹介してもらった美容院に行くことになっていたはず。

 

あんまりゆっくりはしていられないと、僕はチェックアウトをするとすぐに雅人と別れて帰路に着きました。

 

 

帰りの電車内では、夢のような充実感があったものの、その奥には一抹の不安があることに気がつきました。

 

そりゃそうでしょう。

 

まだ勝敗がついたわけではない、つまり雅人と付き合うことになったわけではありません。

 

それなのに僕は、数少ない自分の手札の中の「セックス」という強力なカードを、"JOKER"とも言えるその切札を、早々に切ってしまったのです。

 

この短期戦は一体どうなってしまうんだろうか。

 

いよいよ安くなってしまった手札を見て、僕はもうここから新しい作戦を立てられるとは到底思えませんでした。

 

(つづく)

 

★次回のお話:

2週間の恋 (8) - 迎春記

★前回のお話:

2週間の恋 (6) - 迎春記

 

 

編集後記

この回はやっぱり今の恋人さんに見せられないと思ったので、小説の事はこのままうやむやにして忘れてもらおうと思います。笑