迎春記

― しがないゲイの小噺 ―

『僕が夫に出会うまで』のあらすじ&感想【七崎良輔】

Juerias Partyってご存知ですか?合同会社Juerias LGBT Weddingさんが開催している、ゲイの出会いを目的にしたイベントです。ゲイブロガーさんに対しては、下記のブログを運営している七崎良輔さん(以下、ななぴぃさん)のイベントって言った方が伝わるかもしれないですね。

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僕は5年前、このイベントに1度参加したことがあります。一軒家を貸し切ったホームパーティ形式のイベントで、周りの目や話題を気にせず楽しめたのを覚えています(興味ある方は「Juerias LGBT Wedding」でぜひ調べてみてくださいね!^-^)。しかもこの時、僕はめでたく彼氏ができたんです!...あ、お祝いの言葉はまだ早いです。だって、その彼とはわずか2週間でお別れしてしまったから。笑この彼とのことについてはまた別の機会に...って言っても大したことは書けないと思いますけどね。なにせ2週間ですから。当時25歳。まだ若い恋をしてたんです、僕は。

その時一緒に参加した友達が、先日「ななぴぃさんの書いた本が面白い」と言って僕に貸してくれました。その名前も『僕が夫に出会うまで』。ホントに面白くて一気に読みました。今日はこの本の感想を書きます。

 あらすじ&感想

本の内容としては、そのタイトル通り、ななぴぃさんが夫となる「亮介さん」と出会うまでを綴った本です。この本の中で僕が特に印象的だった、もっと言うと"心を揺さぶられた"場面は、なんと言ってもななぴぃさんが母親に「カミングアウト」する場面です。というのも、カミングアウトを迷っているななぴぃさんの心情が、今の僕の気持ちをまさに言い当てるものだったからです。

カミングアウトをしたら、間違いなく母は落ち込み、悩むだろう。...(中略)...メリットは今後自分を偽らなくてすむことだ。認めてくれた場合、彼氏を紹介したりすることが出来るかもしれない。

うん。そうそう。

カミングアウトしない場合、親が傷つくことはない。このまま愛されて生きていくことができる。デメリットは自分を偽り、ずっと隠しゴトをしている気分でいつづけることだ。...(中略)...そして、僕が独り身だと心配しながら親は死んでいくのだ。

ほんそれ。僕はまさに今この2つを天秤にかけていて、それでいてどちらを取ることもできないでいます。だから、"カミングアウトをする"という選択肢を選んだななぴぃさんが、母親にゲイである認めてもらい「良輔が良輔であることには変わりはない。だから自信を持って生きて行きなさい」。そんな優しい言葉をかけてもらえるような結果を期待しながら、僕は読んでいました。でも、現実は違いました。

「認められるわけがないじゃない、そんなこと!甘えないで!無理よ!私だって、親に自分の性壁なんて話したことはない!」

「これは性癖なんかじゃない!なんで認めてくれないの!」

「それは無理よ。私は認めたくないし、この世の中だって認めてない」

「世の中は認めてくれない!だからこそ、まずはお母さんが認めてくれたら、僕はすごく楽になれる!」

「悪いけど、諦めて。それに、あんたみたいな人に対して、社会は厳しいに決まってる。だからそのことは、誰にも言わずに生きて行きなさい。墓場まで隠し通すの。わかった?」

今、こうやって改めて引用をしていても息が詰まってしまうような言葉たちです。僕は、自分で言うのも気恥ずかしいですが、母親が好きだし、母親も僕のことを愛してくれていると思っています。昔から父親と衝突ばかりする僕のために、いつも間に入って父親を嗜め、そして最終的には僕の意見を尊重するよう説得してくれました。

そんな母親から、ゲイであることは隠して生きろだなんて、自分を否定されるようなことを言われて、もちろん母親の気持ちは痛いほどわかるけれど、とてもじゃないけどその言葉を受けとめ切れる自信が僕にはありません。もうこれは、僕が想定する最悪の"失敗ケース"です。でも、ななぴぃさんは強かった。

ななぴぃさんは、夫となる亮介さんと「パートナーシップ契約公正証書」で、男女が婚姻すると発生する義務や権利を契約する公的な書類を作成すると、再度母親にその事情を説明するため電話をかけます。

「そこまでキチンと考えているなら、わかった!お父さんにも私から話すわ。こうなったらこれ以上、お父さんにだけ隠しておくわけにはいかないわね!」

お母さんがななぴぃさんがゲイであることを認めることができたのか、僕にはわかりません。でも確実にななぴぃさんの真剣な思いを理解はしてくれたのだと思います。そして、2016年10月10日、築地本願寺。両家の親族が参列のもと、良輔&亮介の結婚式が行われたのでした。

カミングアウトについて、僕は一つ勘違いをしていたかもしれません。僕は今まで、カミングアウトは1度きりで、結果は0か100かしかないものだと思っていました。ですが、ななぴぃさんのように、最初は失敗(=0)のように思えても、時間をかけて思いを伝えていくことにより、100に近づけられるものなのかもしれないなと、この本を読んで思うようになりました。...まぁだからと言って、今すぐ両親に電話をかけてカミングアウトができるかと言ったら、全くそんなことはありません。僕は、きっとななぴぃさんのように強くない。でも、こうやって僕の中でカミングアウトに関する勘違いが1つずつ無くなっていって、いつか話すことができる日が来るかもしれない。本書を読んで、そんな気持ちになりました。

今回はカミングアウトの観点で紹介しました。でも本書には他にもたくさんのエピソードが語られています(特に恋愛のエピソードが豊富です!)。ゲイの当事者が自分の体験を語った数少ない本だと思います。綺麗事ではない、生の声が書かれています。もしゲイの方で、今何かに悩んでいる人がいたら、ぜひ本書を読んで欲しいと思います。同じ仲間が少ない(見つけづらい)僕らにとって、"今の自分と同じような経験をした誰かがいる"ということを知るだけでも、前向きな一歩を踏み出すきっかけになると思います。

僕が夫に出会うまで

僕が夫に出会うまで

  • 作者:七崎 良輔
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/05/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)