迎春記

― 手持ち無沙汰なあなたに贈るゲイの小噺 ―

僕がサッカーを"嫌い"になった日。

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土日にトレイルランに行ったなんて話を上げたものだから、僕がスポーツ好きだと誤った印象を与えているのでは、という勝手な思いからこの記事を書きます。笑

 

まあトレイルランをやっているくらいなので、走ることは好きで、きっと「クローズドスキル」に関しては、ひと様にお見せできる程度のものは備わっている気がします(そう信じたいです)。
 
しかし一方の、とりわけ球技に求められるような「オープンスキル」は壊滅的で、学生時代は球技の授業で数々の黒歴史を作ってきた自信があります。
 
というわけで、今日はそんな黒歴史の中でも、僕がサッカーが"嫌い"になった日について書こうと思います。
 
今でも覚えています。小学4年のサッカーの授業の時のことでした。
 
 
既に人よりサッカーが下手である自覚はあったのですが、最初は別に嫌いとは思っていませんでした。
 
 
授業でやるサッカーは、特に決まったポジションのない遊びみたいなものです。
 
運動神経抜群な人が進んで前線に出ていって「フォワード」になり、
 
僕みたいななるべく関わりたくない人は後ろに下がって「ディフェンス」になっていました。
 
まあディフェンスと言われても、ボールをどうすればいいのかなんてまるで分らないですから、試合中はとにかく自分の元にボールが来ないことをひたすら祈り続けていました。
 
 
ある時、運悪くもうこれは自分が担当するしかないというボールがやってきました。
 
大したスピードではなかったと思いますが、自分にとっては恐怖そのもので、
 
自分に向かってバウンドしながら近づくたびに、鼓動は大きくなり、そして足元に来た時にはもう頭が真っ白でした。
 
唯一わかっていたことはボールを蹴らなきゃいけないということです。
 
だから、とりあえず思いきりボールを蹴り返しました。
 
 
自分では相手のゴールの方向に蹴ったつもりだったのですが、案の定ボールの軸をとらえることができず、おかしな回転がかかってラインの外に出ていきました。
 
 
 
あー線から出ちゃったなー。きっとチームのメンバーから非難されるだろうな。。とびくびくしていると、
 
「ナイスクリア!」
 
と思ってもいない言葉が聞こえました。
 
フォワードの、つまりクラスで運動神経抜群の友達でした。
 
その嬉しかったこと。笑
 
"クリア"が何なのかは今でもわからないのですが、とりあえずこの時から僕は「ボールが来たら線の外に出す」ということだけを考えてサッカーをするようになりました。
 
そうすると、苦手なサッカーを少しだけ楽しめるようになったんです。
 
人間というのは、難しく思えることでも、具体的で簡単な指示に置き換えてもらえれば、できる気がするようになるものです。
 
僕はこれを「"目標をセンターに入れてスイッチ"理論」と呼んでいます(詳しくは『新世紀エヴァンゲリオン』第三話を参照)。
 
そんなわけで、最初のころはまだサッカーというものが、もちろん下手であることに変わりはなかったんですけれども、決して"嫌い"という風には思っていませんでした。
 
 
そんな僕に、まもなくサッカーが明確に"嫌い"になる瞬間がやってきます。
 
同じくサッカーの授業。そして同じく僕が"クリア"をしなければいけない場面でした。
 
 
あの有名なイチローだって、打率は3割台。イチローのバットだって毎回ボールに当たるとは限らないんです。
 
当然一般人の僕の足が、サッカーが下手だと自認している僕の足が、毎回ボールに当たるはずがありません。
 
 
蹴り上げた僕の足は見事に空を切り、ボールはラインを割っていきました。
 
 
 
これだけなら良かったんです。これだけなら。
 
 
これだけなら良くあること。慣れていました。
 
 
でもこの日は違いました。
 
 
グランドに面した校舎の上の階から笑い声が聞こえたんです。明らかに人を馬鹿にしたような笑い声が。
 
ふと見上げると、知らない上級生達が僕を見下ろしていました。その笑いが僕に向けられたものであることは明らかでした。
 
一瞬息ができなくなりました。耳も聞こえなくなりました。
 
"顔から火が出るほど恥ずかしい"なんて表現、この時はまだ知らなかったと思いますが、間違いなく顔から火が出るほど真っ赤になっていたと思います。
 
恥ずかしさと、怒りと、自分に対するふがいなさ。
 
いろいろな感情が一気に押し寄せてきました。そして僕の中にわずかに芽生え始めていた"サッカーを楽しむ心"が壊れました。
 
■ 
 
そのゲームがどうなったか、今はもうあまり覚えていません。
 
残っているのはあの時の笑い声の記憶と、サッカーが嫌いだ!という明確な思いだけです。
 
 
 
その日以来、僕はサッカーに関連するものをとにかく避けるようになりました。
 
テレビでサッカーの試合を見るのも、体育倉庫でサッカーボールを見るのも嫌でした。
 
その度にあの時のシーンがフラッシュバックして嫌な気持ちになるからです。
 
小学5年の時には毎年他校との有志のサッカー大会があり、男子の大半が出場するのですが、それも辞退しました。
 
こうしてサッカー嫌いな少年がここに誕生したわけです。
 
 
あれから約20年。
 
サッカーのことはまだ好きになれないですが、サッカー"選手"のことは大好きな大人になりました。
 
 
めでたしめでたし。